突然ですが、「フォーティファイドワイン」を飲んだことはありますか。
「何それ?」と思った方に、もう1つ質問です。
シェリー酒を飲んだことはありますか?
シェリー酒なら聞いたことがある、飲んだことがあるという人がきっといらっしゃるでしょう。
でも、どんなお酒なのか詳しくは知らないという人は多いかもしれません。
今回は、スペイン南部のアンダルシア州で造られるシェリー酒について、どんなお酒なのか、種類や飲み方などわかりやすく解説します。
もくじ
シェリー酒とは
シェリー酒とは、フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)と呼ばれるジャンルの一種で、スペインを代表する白ワインです。ワインは生産地や原料、醸造方法によって分類方法がいくつかありますが、醸造方法の違いに着目すると、下記のの4つに分類されます。
- 「スティルワイン(非発泡ワイン)」
- 「スパークリングワイン(発泡ワイン)」
- 「フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)」
- 「フレーバードワイン(混成ワイン)」
最初にアルコール発酵を完全に完了させた辛口ワインを造り、ブランデーを添加して酒精強化した後、オーク樽に移して熟成させます。この時、樽いっぱいにはせず、樽の上部に4分の1ほどの空間をあけておきます。
こうすることで、ワインの液表面に「フロール」と呼ばれる特殊な酵母の膜ができ、ワインは緩やかに熟成し、独特な風味を持つシェリー酒に仕上がります。
歴史
ヨーロッパ諸国で植民地獲得の動きが活発だった大航海時代に、シェリーは長い船旅に欠かせない、長期保存に適したお酒として愛されてきた歴史があります。
海賊の略奪したシェリーがイギリス・ロンドンに流れてきたのをきっかけに、やがてイギリスの宮廷で大流行。シェークスピアの作品にも登場するなど、イギリスでも大変親しまれています。
また、シェリーはスペインのマラガ生まれの画家・ピカソがこよなく愛したお酒としても有名です。
呼称について
日本では、シェリー酒と呼ばれていますが、世界では他にいくつかの呼称があります。
本場のスペインでは、ヘレスのワインという意味の「ビノ・デ・ヘレス(Vino de Jerez)」と呼ばれています。
- フランス語ではケレス(Xerez)
- 英語ではシェリー(Sherry)
と呼ばれます。
「原産地呼称法」で定められた正式名称は、3つの呼び方を合わせた「ヘレス・ケレス・シェリー(Jerez-Xerez-Sherry)」です。
シェリー酒が造られるスペイン南部地方のアンダルシア
シェリー酒は、スペイン南部地方にあるアンダルシア州のヘレスの町を中心としたエリアで造られている銘酒です。アンダルシア州は、イベリア半島の最南端に位置していて、ジブラルタル海峡を挟んですぐそこの距離には、モロッコが見えます。
イスラム文化が色濃く残り、アルハンブラ宮殿などの世界遺産やフラメンコ音楽と闘牛の発祥の地としてもよく知られています。
気候は典型的な地中海性気候で、夏は太陽の日差しが眩しいくらいに照りつけ、雨はあまり降りません。ぶどう畑はなだらかな丘状で、土壌は石灰分を多く含んでいます。
アンダルシア州で最も多く生産されているワインは、シェリー酒です。
シェリー酒の原料として使用が認められているのは、次の3種類の白ぶどう品種です。
シェリー酒の原料として最も多く使われていて、シェリー酒の約95%はこの品種から造られます。シェリー酒以外には使われない品種です。
マスカット系の品種で、甘口のシェリー酒を造るのに使われます。
天日干しで水分を蒸発させて使われます。糖分や酸味が凝縮され、極甘口に仕上がります。
生産地は、
- アンダルシア州のヘレス・デ・ラ・フロンテラ
- サンルカール・デ・バラメーダ
- エル・プエルト・デ・サンタ・マリア
の3つの町を結ぶ三角地帯に限られています。
シェリー酒のさまざまな飲み方
シェリー酒は、食前酒として飲むスタイルが最もよく知られています。白ワイン用のグラスに注いで、ストレートで飲むのがスタンダードな飲み方です。ワイングラスを使うことで、独特な香りを堪能できます。
糖度が高い甘口・極甘口のシェリー酒は、食後にデザートとして飲まれることもあります。
辛口でも甘口でも、アルコール度数が通常のワインよりも高いので、お酒に弱い方はカクテルとして楽しむのもおすすめです。
ジンジャエールやサイダーなどで割って、レモンやライム、杏露酒などお好きなリキュールを加えたり、楽しみ方の幅が広いのもシェリー酒の魅力。
シェリー酒の種類
シェリー酒といえば、辛口をイメージする方が多いかもしれませんが、辛口から極甘口まで多様な種類のシェリー酒があります。
ここからは、種類ごとの特徴や味わい、相性の良い料理などをご紹介します。
フィノ
味わいのタイプ | 辛口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 15~17% |
特徴 | 色が淡く、すっきりとしていてフレッシュな味わいです。 |
相性の良い料理 | 白身魚のフリット、天ぷらなど |
マンサニーリャ
味わいのタイプ | 辛口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 15〜17% |
特徴 | ライトでなめらか、繊細な口当たりです。 熟成したフィノといったタイプで塩味を感じます |
相性の良い料理 | 塩茹での海老、アスパラガスなど |
アモンティリャード
味わいのタイプ | 辛口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 16〜22% |
特徴 | 琥珀色でナッツの香りが豊か。 フィノとオロロソの中間的な印象です。 |
相性の良い料理 | 燻製料理、中華料理など |
オロロソ
味わいのタイプ | 辛口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 17〜22% |
特徴 | マホガニー色。 ドライフルーツのような甘い香りで、深いコクと厚みのある味わいです。 |
相性の良い料理 | 肉の煮込み料理、ナッツなど |
パロ・コルタド
味わいのタイプ | 辛口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 15〜22% |
特徴 | 綺麗な琥珀色。 アモンティリャードに似た香りと、まろやかな味わいを併せ持つタイプです。 |
相性の良い料理 | ハモン・イベリコ、熟成タイプのチーズなど |
ペイル・クリーム
味わいのタイプ | 中甘口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 15〜22% |
特徴 | 白ワイン色。程よく酸味も感じられます。 フィノやマンサニーリャに糖分を加えて造られています。 |
相性の良い料理 | フォアグラ、フレッシュフルーツ(洋梨)など |
ミディアム
味わいのタイプ | 中甘口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 15〜22% |
特徴 | 琥珀色。香り高く軽やかな味わい。アモンティリャードに糖分を加えて造られます。 |
相性の良い料理 | フォアグラ、パテ、エスニック料理など |
クリーム
味わいのタイプ | 中甘口 |
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ぶどう品種 | パロミノ |
アルコール度数 | 15〜22% |
特徴 | 濃い琥珀色。厚みのある複雑な味わいで、オロロソと似ています。 オロロソに糖分を加えて造られています。 |
相性の良い料理 | フォアグラ、フレッシュフルーツ(オレンジ、メロン)など |
モスカテル
味わいのタイプ | 甘口 |
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ぶどう品種 | モスカテル |
アルコール度数 | 15~22% |
特徴 | 栗色から濃いマホガニー色。干しブドウにして発酵させることで糖度を上げます。 マスカット系のフレッシュさ、フローラルなアロマとフルーティーな味わいです。 |
相性の良い料理 | フルーツ・サラダ、アイスクリーム、ケーキ |
ペドロ・ヒメネス
味わいのタイプ | 極甘口 |
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ぶどう品種 | ペドロ・ヒメネス |
アルコール度数 | 15~22% |
特徴 | 黒に近い濃い色。干しブドウにして糖度を高くして造られます。 黒蜜のような濃厚な風味でありながら、十分な酸味があります。 コーヒーやダークチョコレートの香りを感じます。 |
相性の良い料理 | アイスクリーム、チョコレート、青かび系チーズなど |
スペイン料理とワインを組み合わせる時のポイントはこちらで紹介しているので、ホームパーティーの際に参考にしてみてください!